「55+シニアコミュニテイ」 シニアの季節‐2

 

 かき集めた頭金と30年のローン(完済は110歳である!)で55+のシニアコミュニテイに購入した家は、ここヒューストンの市街地を囲む外側の環状線のすぐ南にのんびり広がるゴルフ場の中にあり、各ホールを囲んで建てられている約800軒の中で平均的な広さ、つまり200坪の敷地に80坪見当の,2階のないバリアフリーの一戸建てである。標準的な3ベッドの家と言える。すなわち2つのWalk-inクローゼット付きのマスターベッドルームの他にバストイレ付1部屋、少し狭いもう1部屋、20帖以上あるリビングルームと続いたダイニングスペース、主人用のデンにもってこいのオープンスペース、キチン、来客用のトイレがもう一つ、洗濯機・乾燥機の置き場には小型ワインセラーもおける、という陣容である。もちろん車2台が入るガレージはあるが、地質の関係か、ニューヨークでは必ずついている地下室がヒューストンには無い。その分、物置き場を兼ねて室内とガレージの天井に折り畳みのはしごで上がれるストックルームがある。はしごは閉めれば天井板である。室内の冷暖房、庭にスプリンクラーは必需品。もう少し大きな4ベッドの家、小さめの2軒や4軒続きの長屋的な作りもあって、選択の余地はある。が80歳の身、3ベッド、これで来客にも対応出来、十分である。

 55+の家と言うのは55歳以上が購入出来る家で、多くは一角にまとまってコミュニテイを形成しており、大きさや値段、家の格などアメリカ全土にピンからキリまである。以前カリフォルニアで見せてもらった知人の家は、リタイアコミュニテイというのに億を超える豪邸のコミュニテイで、格差にため息が出た。何か税金の優遇制度でもあるのかと思ったが、特に無さそうで(65歳以上には誰でも減税策がある)特徴としては、周りに子供の姿が無いリタイア後の老人の社会なので緊張感無くゆったりしている、皆大変フレンドリーで老後を楽しんでいる、概ねクラブハウスがあって、管理会社の従業員が住民の世話やプールなどの管理をしたり、色々な催しを企画運営する、などが挙げられる。医療施設が付いている場合もあるが、独立して生活できる老人向けのここには無し、ただし車で5-10分以内に大手の病院の分院や検査施設などが何軒もあるので不自由はないし、世界一のヒューストンの医療街は15分のところ、という老人にはもってこいの場所である。一般の住宅街でこの値段の家を探すと、ゾーンがはっきりしているアメリカでは大きな家と小さな家が混ざることが無いので、家自体が気に入っても周りの雰囲気が老人世帯やビジネスマンのリタイヤ組とかけ離れる可能性がある。

   入口ゲートにはセキュリテイメンバーが24時間常駐で車の出入りを見張っているが、住民 の車は取り付けられたステッカーを読み取って自動で上下するゲートの柵を通ることが出来る。ゲート内には、パブリックコースのゴルフ場の他、プール付きのクラブハウス、集会場、テニスコート2面などがあり、池を渡る長い橋が散歩道を彩っている豊かな環境である。今回で、ニューヨークへ勇躍赴任してアパート住まいを始めてから6回目の引っ越しになる。アメリカ人の平均的な転居回数をクリア。アパートから最初の家に移ったとき整えたHenredonの家具が今もでんと腰を据えている。

 主人が地元の地方都市から海外への進出を試みた中堅企業の海外派遣1号としてスカウトされ、ニューヨークへ居を移して44年になる。今になれば前しか見ていなかった30代なればこそ出来たことと思うが、親から引継いだ工場を閉鎖しての英断であったと当時を思い返している。ABCも知らずに突然英語の世界へ連れてこられ、放り込まれた1 0歳、6歳、5歳の3人の子供は、言葉の壁と(当時はまだ日本人と言う人種の壁ともすこーし)戦いながら、何とか世界で一流校と言われている大学で青春時代を楽しみ、50代に入っている。昨今は、孫たちが受験年齢になり、次々難関に挑戦している。

 30代後半に新天地をアメリカに求めて、3人の子供を引き連れニューヨークに渡った企業戦士の40余年後のお話・「シニアの季節」。アメリカに山ほどある55+という高齢者コミュニテイへ居を定めた80歳元気印の日常を折に触れお届けしている。ビザの関係もあって専業主婦+の40余年の引き出しからの思い出話には試行錯誤の子育てや教育のことが出てくると思うので「子育て」タグを加えてあります。ご期待に副うべく努力します。